
旧耐震の住宅ローン控除は使えるか?条件や証明書の取得方法をご紹介
旧耐震基準の住宅を購入しようとお考えの方は、「住宅ローン控除が使えるのだろうか」と不安に思われることが多いのではないでしょうか。住宅ローン控除は住宅購入にかかる税負担を大きく軽減できる制度ですが、旧耐震基準の住宅の場合には一定の条件を満たさないと利用できません。本記事では、昭和五十六年以前に建築された旧耐震基準の住宅に住宅ローン控除が適用できるのか、また控除を受けるために必要な条件や手続きを、法律と実務の両面から分かりやすく解説します。
旧耐震基準の住宅とは何かと住宅ローン控除の基本要件
旧耐震基準の住宅とは、建築基準法が現在の耐震性能の基準に改正される前、すなわち昭和56年(1981年)12月31日以前に建築確認を受けた住宅を指します。この時期以前に建てられた住宅は「旧耐震基準」と呼ばれ、地震に対する耐力が現行の耐震基準よりも弱い可能性があります。
住宅ローン控除(正式名称:住宅借入金等特別控除)は、住宅ローンを利用してマイホームを取得・入居した場合に、一定期間、年末のローン残高に応じた控除を所得税から受けられる制度です。一般的な適用条件として、住宅の床面積が50平方メートル以上であること、居住割合が2分の1以上であること、借入期間が10年以上であること、合計所得金額が2,000万円以下である点が挙げられます。
しかし、旧耐震基準の住宅は、この控除の対象には原則として含まれません。現行の耐震基準に適合していることを示す証明がない限り、住宅ローン控除を受けることはできません。
| 項目 | 条件 | 備考 |
|---|---|---|
| 建築時期 | 1981年以前 | 旧耐震基準に該当 |
| 床面積 | 50平方メートル以上 | 居住用部分が2分の1以上必要 |
| 所得金額 | 2,000万円以下 | 控除適用の上限条件 |
旧耐震基準の住宅を購入する際に住宅ローン控除が利用できる場合の条件
旧耐震基準の住宅、すなわち昭和56年以前に建築された住宅は、そのままでは住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)の対象外ですが、一定の証明書を取得すれば控除を受けられる可能性があります。たとえば、耐震基準適合証明書、既存住宅性能評価書(耐震等級1以上)、あるいは既存住宅売買瑕疵保険付きの保証書があれば、新耐震基準に適合していることが示され、控除の対象となることがあります 。必要な書類を事前に確認して準備を進めることが重要です。
これらの証明書の取得には、時間も費用もかかります。耐震基準適合証明書を得るためには、耐震診断とその後の証明書発行の手続きが必要であり、費用はおおむね3万~15万円、取得までに少なくとも1か月からそれ以上かかることがあります 。そのため、購入を検討している段階で早めに情報を集め、余裕を持って準備をすることが肝要です。
売主が既に証明書を取得していることが望ましいですが、引き渡し後でも条件を整えれば取得は可能です。たとえば、買主が引き渡し前に「仮申請」を行い、その後に耐震補強工事を実施してから適合証明書を取得する方法などがあります 。
| 項目 | 証明書の種類 | 取得のタイミング・費用・注意点 |
|---|---|---|
| 耐震基準適合証明書 | 建物が現行耐震基準に適合している証明 | 購入前に取得が望ましい。3万~15万円・1か月以上要することが多い。 |
| 既存住宅性能評価書 | 耐震等級1以上であることを評価している書類 | 性能評価機関が発行。事前に評価申請が必要。取得費用・期間とも状況により異なる。 |
| 既存住宅売買瑕疵保険付き保証書 | 耐震などの瑕疵が保険で保障されていることを示す書類 | 売主が保険加入している場合に利用可能。引き渡し前に付保が必要。 |
要耐震改修住宅として住宅ローン控除を適用できるケース
要耐震改修住宅とは、耐震基準に適合していない中古住宅であって、購入者が「事前に耐震改修をする旨の申請」を行い、その取得日から6か月以内に改修を完了し、かつ現行の耐震基準に適合していると証明された住宅をいいます。これに該当すれば、令和4年1月1日から令和7年12月31日までの間に居住の用に供した場合に、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)の対象となります。該当するためには、取得後6か月以内の居住開始や、控除対象となるローン返済期間が10年以上といった一般的な条件を満たす必要があります。
この要耐震改修住宅への適用期間は、令和4年1月1日から令和7年12月31日までの取得・居住が対象となります。控除額の基礎となる住宅ローン等の年末残高に、控除率 0.7% を掛けた額が控除されます。ただし、住宅ローン控除の適用条件には、床面積が50平方メートル以上で、かつその2分の1以上を自己の居住用とすること、所得が2,000万円以下であること、借入期間が10年以上であることなどがあります。
大切なポイントとして、旧耐震基準(昭和56年5月31日以前)に建築された住宅でも、この「要耐震改修住宅」として扱われれば、住宅ローン控除の適用が可能になります。つまり、耐震改修手続きと証明を行うことで、旧耐震住宅でも控除を受けられる道が開けるのです。
| 項目 | 内容 | 期間・対象 |
|---|---|---|
| 要耐震改修住宅とは | 耐震基準未適合住宅を改修し証明された住宅 | 取得日から6か月以内に改修完了 |
| 適用期間 | 住宅ローン控除が適用可能な期間 | 令和4年1月1日~令和7年12月31日 |
| 控除要件 | 床面積50㎡以上、所得2,000万円以下、借入期間10年超など | 要件をすべて満たす必要あり |
住宅ローン控除を受けるための実際の手続きと注意点
旧耐震基準の住宅で住宅ローン控除を利用するには、必要書類をそろえ、申請の流れを理解し、他の控除との関係にも注意が必要です。
まず、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)を受ける際に必要な書類は、以下の通りです。
| 書類名 | 内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 耐震関連証明書 | 耐震基準適合証明書、既存住宅性能評価書(耐震等級)、既存住宅売買瑕疵保険の保証書 | 引渡し前に取得、または仮申請で可 |
| 改修工事関連申請書類 | 耐震改修計画認定申請書など | 引渡し後に工事する場合に必須 |
| 確定申告書類 | 確定申告書本体、(特定増改築等)控除額計算明細書など | 最初の年は税務署に提出 |
耐震関連証明書の取得には、売主が取得することが望ましく、仮申請により引渡し前に対応することも可能です。ただし、これらの証明書取得には数万円〜数十万円の費用と、最低でも1か月程度の時間がかかることが多いため、売買契約前からの準備をおすすめします。これにより、住宅ローン控除の適用漏れを防げます。なお、証明書取得にかかる期間・費用については一般的な目安ですので、詳細は売主や専門家とご相談ください。
申請の流れとしては、まず購入後最初の年に確定申告が必要です。この際、先に挙げた書類を添付して所轄の税務署に提出します。2年目以降は、年末調整や確定申告で「控除額の計算明細書」を添えて手続きを続けます。手続きは、申告期限や添付書類の要件に注意して進める必要があります。
最後に注意点として、住宅ローン控除と「住宅耐震改修特別控除」(耐震改修にかかる税額控除)は併用できない点があります。耐震改修費用に対して所得税控除を受けたい場合は、それぞれの制度の対象とメリットを比較した上で選択することが大切です。
まとめ
旧耐震基準の住宅を購入する際も、一定の条件を満たせば住宅ローン控除を受ける道は開かれています。耐震基準適合証明書などの取得や耐震改修による手続きは手間や費用がかかりますが、控除の恩恵は大きなものです。正しい手順や必要書類の準備を怠らず、余裕を持って行動することが肝心です。少しでも不安や疑問があれば、早い段階で専門家に相談して損のない選択を心掛けましょう。今後の住まい選びに、今回の内容が役立てば幸いです。