空き家で起きる火災は何が原因?押さえたい対策と所有者の責任も解説!

空き家で起きる火災は何が原因?押さえたい対策と所有者の責任も解説!

空き家を所有しているときは、物件でトラブルが発生しないように注意しておく必要があります。
空き家には火災などのリスクがあり、その原因や予防策を把握しておくと安心です。
そこで今回は、空き家で発生する火災の原因と対策に加えて、火災が発生したときの所有者の責任についても解説します。

空き家で起きる火災の原因

空き家で起きる火災の原因

空き家で起きる火災の原因は、以下のとおりです。

放火

空き家で火災が起きる大きな原因の一つは放火です。
人目が少ないため、不審者に狙われやすくなります。
平成27年の放火件数は4,000件を超え、総出火件数の10%以上を占めました。
令和5年では、総出火件数が3万8,672件で、そのうち放火と放火の疑いを含む件数は4,111件となり、全体の10.6%に上ります。
これらのデータからも分かる通り、放火は決して珍しい犯罪ではありません。
主な要因としては、空き家の管理が行き届かず、建物が放置されていることが挙げられます。
無施錠で侵入しやすい状態や、人の気配が感じられない物件は、とくに不審者の標的になりやすいです。
そのため、火災のリスクを下げるためには、所有者として日頃の管理を忘れないようにしましょう。
空き家がゴミや資材を放置した状態だと、放火の導火線になりやすいため、不要物を溜め込まないことが大切です。
こうした放置物は見た目にも悪く、近隣トラブルの原因にもなるので注意が必要です。

タバコ

数ある出火原因の中でも、タバコによるものは大きな割合を占めています。
令和5年のデータでは、タバコを原因とした火災が3,498件あり、放火とその疑いを除くと最多で、全体の9.0%に当たります。
人が住んでいない空き家の場合、室内での吸い殻の不始末による火災リスクは比較的低めです。
しかし、通行人のポイ捨てによって発火する可能性は否定できません。
敷地内に雑草が生い茂り、不法投棄されたゴミがある状態だと、ポイ捨てされた吸い殻から雑草やゴミに火がついて燃え広がる恐れがあるので注意が必要です。
また、周辺の路上喫煙者の行動パターンを把握することも有効で、特定の場所に吸い殻が多く落ちているなら警戒を強める必要があります。

そのほかの原因

そのほかの空き家で火災が発生しうる原因としては、ガス漏れからの引火や配線機器のトラブル、漏電などが挙げられます。
実際に令和5年に建物で起きた火災の原因をみると、コンロが2,838件、電気機器が2,205件でした。
ガスや電気をまだ利用できる状態の空き家では、こうした機器の異常による火災に注意しておく必要があります。
古いガス管や老朽化した電気設備は、専門業者の点検が欠かせず、長期間放置すれば劣化が進んで火災リスクが高まります。

空き家で火災を防ぐ対策

空き家で火災を防ぐ対策

空き家では管理が不十分な状態が火災リスクを高めるため、日頃から建物や敷地をきちんと管理することが効果的な対策となります。
対策の具体例としては、以下のような方法が挙げられます。

空き家でおこないたい管理

火災対策として空き家を管理するときは、まず建物の戸締まりを徹底することが大切です。
玄関や窓だけでなく、敷地の入り口にある門なども忘れずに施錠しましょう。
敷地内の雑草をこまめに抜き、ゴミを片付けることも重要です。
郵便受けを定期的にチェックし、チラシなどを取り除くと、人の出入りを感じさせる雰囲気になります。
また、空き家を管理している個人や法人の連絡先を現地に提示すれば、しっかりと管理されている印象を周囲に与えられます。
片付けたゴミやチラシ、新聞紙などを外に置きっぱなしにすると、管理がずさんなイメージを与えかねません。
さらに、こうした放置物に放火やポイ捨てされた吸い殻で火がつくおそれがあり、火災リスクが高まります。
定期的な巡回時には、屋根や外壁の破損箇所も確認しましょう。
そこから雨水が入り込むと建物内部が湿気で傷み、火災に限らず劣化による倒壊リスクも高まります。

人目を増やす対策

空き家で人目を増やす方法としては、人が近付いたときに自動で点灯する照明の設置が効果的です。
誰かが近付くとライトが点くため、建物への不審な接近を周囲が察知しやすくなります。
また、所有者が定期的に現地を訪れ、建物や敷地を見回ることも有効です。
この際、見回りの日時を不定期にすると、不審者に警戒心を与えられます。
とはいえ、住人がいない以上、完全に人目を確保するのは難しいです。
そこで、近隣の方にも協力をお願いし、何か異変を感じたら、すぐ連絡してもらえるようにしておくと安心です。
さらに、ご近所の方と定期的に情報交換をおこなうことで、地域全体で空き家の様子を見守る体制を築けます。
こうした連携は不審者の早期発見にもつながります。

管理を委託する

所有者が日常的に空き家を訪れてこまめに管理することは、火災対策に大きな効果があります。
しかし、物件が遠方にある場合や所有者が高齢の場合、頻繁に足を運ぶのは難しいかもしれません。
そうしたときは、不動産会社などに管理を委託すると安心です。
管理を専門業者に任せれば、所有者が現地へ行けない状況でも、適切な点検や清掃などを継続して実施してもらえます。
その結果、放火やタバコのポイ捨てによる火災リスクも下げることができ、所有者の負担が軽減されます。
委託先の業者を選ぶ際には、実績や口コミなどを確認して信頼できるか見極めることが大切です。
管理範囲や費用についても、詳細を把握してから契約を結びましょう。

空き家で火災が起きたときの所有者の責任

空き家で火災が起きたときの所有者の責任

空き家で火災が起きた場合、所有者の責任はどのようになるのでしょうか。
ここでは、その点について解説します。

所有者に責任はあるのか

自分の空き家で火災が発生し、隣家などに延焼した場合でも、基本的には損害賠償を求められません。
これは明治32年に制定され、現在も有効な失火責任法が根拠となっています。
同法は、失火(過失により起きた火災)であれば、火災の責任を負わなくてよいと規定しているのです。
日本では国土が狭く、木造住宅が密集しているため、一つの火災が広範囲に損害をもたらしやすい現状があります。
火災を引き起こした側は自宅を失っている場合が多く、さらに周囲の損害まで賠償させるのは酷だという考えから、一般的な損害賠償が免除される仕組みです。

失火責任法の注意点

ただし、失火責任法は重過失がある場合には適用されない可能性があります。
同法の条文にも、重大な過失がある場合には免責の規定が及ばない旨が明記されています。
そのため、空き家の火災で所有者に著しい過失が認められれば、損害賠償を求められるかもしれません。
何が重過失に当たるかはケースバイケースですが、火災の発生が十分に予想できる状況で、必要な対策を怠っていたと判断されると重過失とみなされる恐れがあるので注意しましょう。

放火されたときの責任

放火は過失ではなく故意による火災ですが、犯人が第三者の場合、所有者がその責任を負うことは基本的にありません。
しかし、空き家の管理が極めて不十分で、不審者の侵入を容易にしていたとみなされる場合には、放火でも所有者が重過失と判断される可能性があります。

損害賠償を除く責任

所有者に重過失がなければ、法的には損害賠償責任を負うことはありません。
しかし、隣家などに被害を与えた場合、何らかのお詑びが必要になるのが一般的です。
さらに、あらかじめ火災保険や個人賠償責任保険などに加入しておき、近隣住民とも普段からコミュニケーションを取っておくと、万が一のときに対応しやすくなるでしょう。
隣近所へのお詑びなどで、ある程度の出費が生じる可能性もあるため、こうした点も想定しておくと安心です。

まとめ

空き家で発生する火災原因としては、放火やタバコのほか、ガスや配線機器のトラブル、漏電などが考えられます。
防火策としては、建物の戸締まりや敷地内の清掃、所有者自身による見回り、あるいは管理の委託などが挙げられます。
火災が発生しても、失火責任法の規定により所有者が責任を問われない場合が多いですが、重過失が認められれば賠償の可能性もある点には注意が必要です。