不動産相続における遺産分割協議とは?よくあるトラブルの解決策も解説

不動産相続における遺産分割協議とは?よくあるトラブルの解決策も解説

兄弟姉妹で親から不動産を相続した場合、遺産分割協議をおこなうのが一般的です。
相続をスムーズに進めるには、相続が発生する前から遺産分割協議について考えておくのがおすすめです。
そこで今回は、遺産分割協議とはどのようなものなのか、遺産分割協議でよくあるトラブルと解決策を解説します。

不動産相続における遺産分割協議とは

不動産相続における遺産分割協議とは

相続が発生したら遺産分割協議をおこないますが、その内容についてご存じの方は少ないかもしれません。
まずは、遺産分割協議の概要や具体的な手続きをチェックしてみましょう。

遺産分割協議とは

遺産分割協議とは、亡くなった方が残した財産について、相続人がどのように分け合うかを話し合う場のことを指します。
したがって、遺産分割協議に参加するのは、亡くなった方の配偶者や子どもなど、相続権のある方全員です。
遺産分割協議は相続人全員が参加し、話し合いで合意に至った内容を遺産分割協議書に記す必要があります。

遺産分割協議がおこなわれない場合がある?

亡くなった方が生前に遺言書を残していて、その内容に沿って遺産を分割する場合、遺産分割協議はおこなわれません。
ただし、遺言書において財産の一部についてのみ記載がある場合、ほかの財産を分割するために遺産分割協議が必要になります。
また、遺言書が残された場合であっても、その内容とは異なる割合で遺産を分割するならば、例外として遺産分割協議をおこなうことがあります。
相続が発生したら、まずは遺言書があるかどうかを確認し、遺言書の内容だけで遺産の分割ができるかを考えてみましょう。

遺産分割協議の進め方

実際に遺産の分割を始める前には、誰が財産を相続するのか、相続する財産はどれくらいあるかといった点を洗い出す必要があります。
相続人の洗い出しは、亡くなった被相続人の戸籍からたどるのが一般的です。
この相続人の洗い出しが不十分だと、相続人全員で遺産分割協議をおこなえないため、新たな相続人が出てくると最初から遺産分割協議をやり直すことになります。
また、どのような財産が残されたかについては、漏れがないように調査することがポイントです。
遺産分割協議が終わった後で新たな財産が判明した場合には、改めて話し合いが必要になります。
相続人・相続財産の洗い出しが完了したら、実際に誰がどれくらいの財産をもらうかについて話し合います。
この分割の指標となるのが、法定相続分です。
ただし、相続人のうち1人が亡くなった方を介護していた場合や、相続人のうち1人が生前にマイホーム購入費用の援助を受けていた場合などは、法定相続分ではなく金額を修正することがあります。

不動産相続の遺産分割協議でよくあるトラブル

不動産相続の遺産分割協議でよくあるトラブル

遺産分割協議の席では、さまざまな意見の相違からトラブルが発生しやすくなります。
何が理由でトラブルが起こるのか、具体的な例を見てみましょう。

不動産の分割方法をめぐるトラブル

実家が遺産として残された場合、複数の兄弟姉妹でどのように分割するかをめぐり、トラブルになることがあります。
不動産が遺産分割でトラブルとなりやすいのは、預貯金などと異なり平等な分割が困難であるためです。
マンションや土地など複数の不動産を相続する場合、それぞれ平等になるよう1つずつ不動産を受け継ぐ方法があります。
現物として分割できない場合には、誰か1人が不動産を相続して残りの兄弟姉妹には自分の預貯金から代償金を支払う方法がとられることがあります。
このほかに、相続した不動産を売却したうえで、お金に換えて兄弟姉妹で分割することも可能です。

不動産の価値をめぐるトラブル

兄弟姉妹のうちだれか1人が不動産を相続し、ほかの兄弟姉妹には自分の預貯金から代償金を支払う場合、代償金の金額でトラブルになることがあります。
代償金をいくらにするか決めるには、何らかの不動産評価方法を基準にするのが一般的です。
この不動産評価方法には相続税路線価や固定資産税評価額など複数のものがあり、どれを選択するかによって代償金の金額に差が生まれます。
代償金を支払う側は不動産の評価額が低くなるものを選択したい一方で、代償金を受け取る側は不動産の評価額を高くしたいと考えるのが一般的です。
この不動産の評価額の算定においてどの評価方法を選択するかは、トラブルになりやすいポイントです。

遺産の範囲をめぐるトラブル

場合によっては、相続する財産の範囲が把握しきれないことがあります。
とくに、家族が知らない田畑や山林などを生前に相続している方が亡くなると、遺産の範囲の把握が困難になります。
遺産の範囲が把握しきれていない場合には遺産分割協議の内容を書類にまとめるときに、将来的に新たな資産が判明した場合にはその分の遺産分割協議はあらためておこなうとしておくと良いでしょう。

不動産相続の遺産分割協議におけるトラブル解決策

不動産相続の遺産分割協議におけるトラブル解決策

遺産分割協議の前には、よくあるトラブル事例とともに、トラブルの解決策を確認しておくことが大切です。

親が元気なうちから相続を考えておく

親が亡くなってから相続の問題に直面する場合、兄弟姉妹で意見が対立し大きなトラブルに発展することがあります。
こうした遺産分割協議の根本的なトラブルを回避するには、親が元気なうちから相続を考えておくことが有効な解決策です。
将来的に1軒の実家が複数の兄弟姉妹に残されることがわかっている場合、兄弟姉妹でどのように相続するか話し合うことが望ましいでしょう。
もちろん、親の意向があれば、その内容を遺言書にしてもらい、相続が発生してからトラブルにならないようにしてもらうことも解決策となります。
相続が発生しても冷静な話し合いができると思っていても、ほかの兄弟姉妹が違う考え方を持っていることは珍しくありません。
できるだけ早めに話し合いの場を持つことが、基本的なトラブルの解決策です。

調停を申し立てる

遺産分割協議で不動産の分割方法などについて合意できない場合、家庭裁判所の遺産分割調停を利用するのが解決策です。
調停とは裁判ではなく、調停委員同席のもとで公平な解決をはかるものです。
相続人同士の話し合いがまとまらない場合には、調停委員の助けを受けながら話し合いで解決を目指します。
調停で遺産分割協議ができない場合には審判をおこない、裁判官によって遺産の分割が決められるのが一般的です。
遺産分割協議の話し合いが進まない場合には、大きなトラブルへと発展する前に調停・審判の利用を検討してみましょう。

遺言執行者を指定しておく

親が生前にできるトラブル回避策として有効なのが、遺言執行者の指定です。
遺言執行者とは、遺言書の内容どおりに遺産分割などを進める役割を担う方です。
遺言書の内容によっては、兄弟姉妹のなかで不満が出て遺産分割がスムーズに進まないことがあります。
こうしたトラブルに備えて遺言執行者を指定しておくと、手続きがストップすることなくスムーズな手続きが可能です。
ただし、遺言書の内容自体が原因でトラブルが発生することがありますので、遺言書作成にあたっては、法律の専門家にサポートしてもらうことを検討するのがおすすめです。
弁護士などに遺言書作成を相談しておけば、分割しにくい不動産の相続でトラブルの回避が期待できます。
不動産相続でトラブルが予測される場合には、プロの手を借りて遺言書を作成することを検討してみてください。

まとめ

遺産分割協議とは、相続人が全員で遺産の分割方法について話し合う場のことです。
遺産分割協議では、不動産の分割方法や評価方法などをめぐり、トラブルが発生しやすくなります。
遺産分割協議のトラブルはあらかじめ相続について話し合うことである程度回避できるほか、トラブルに発展した場合には調停などを利用して解決を目指しましょう。